気づきと、格闘しつづける。

CMSP 32期リーダー 藤本篤二郎 (東京大学2年生)

 

1tacit knowledge

今年度の前半期に、「産業空間における知識・技術・情報の移動」に関する理論を知りました。Asheimの「知識ベース論」(knowledge-base theory)です。製造業やクリエイティブ産業などでの知識や技術の伝達は、そこで行われるコミュニケーションの種類によって分類される(大きく3)、というものです。その中で、特にものづくりにおける知識・技術の伝達には、対面かつ言語以外の手段も含むコミュニケーションが用いられ、そこでの知識・技術は“tacit knowledge(一般に暗黙知)と呼べるものである、といった内容でした(*1)。

いったい何を言い出すのかと思われたかもしれません。この学びへの強烈な面白さが跳ね返ってきたのが、今年の秋、広田町での出来事でした。木材をかんながけしたい、でもどうにも上手くいかない。しばらく悪戦苦闘していると、普段からとてもお世話になっている町の方が、その場でやり方を教えてくれ、一瞬で解決したのです。まさに、「対面かつ言語以外の手段」によって伝達された瞬間でした。また、秋も深まり、冷たい北西風が吹き始めるころ、軒先に並ぶ干し柿の美味しい作り方を、その場で教えてくれた方もいました。後日「干し柿 作り方 白い粉」といった類で検索しても、そのやり方を見つけ出すのは困難でした。

ググるより、速い。

産業と直接関わるものではないにせよ、“tacit knowledge”の圧倒的な蓄積を、広田町で垣間見た瞬間でした。

https://vimeo.com/243310436

(広田町のおかん。一つ一つが手作業。でも、とても手慣れています。)

2.日常から、変えていく。

大学に入ってから、方向を見失い、やりたいことがぶれ、頑張るときに頑張れない癖がついていました。2度も留年したし、親父の願いや、全く連絡してこないけど実はとても心配している祖父母の想いにも気づかされました。それでこの一年間、人並みに勉強してきました。そこで得たことはとてもシンプルで、「日常のすぐ近くに、工夫する種はある」ということです。日常の中で学んでこなければ、広田町での上のような気づきを、強烈な面白さとして得ることはできなかったと感じています。

僕たちは普段、東京の大学で学んでいます。それをいかに、広田というフィールドに持ち込んで、活かし尽すことができるか。いかに、広田で得たことを東京での日常にまた新しい気づきとして還元していくか。日常のあり方から、発見や、自分で選択し自走できる力をもっと得るための工夫を積み重ねながら、僕と、広田の人との間で明らかになっていく気づきを、頭絞って考えたり、感覚で掴みながら、楽しみ続ける―ポジティブに、気づきと格闘する―半年にしたいと思っています。

 

(*1) Asheim,B.,Coenen,L. and Vang,J. (2007) Face-to-face, Buzz, and Knowledge Bases: Sociospatial Implications for Learning, Innovation, and Innovation Policy, Environment and Planning C: Government and Policy 25:655-670.

 

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